第10章 彼女に警告を与える

有川紘樹の視界には、いまや「いじめられている」その背中しか残っていなかった。

あまりにも見慣れた光景だ。

いつだって、こう。

佐伯薫は佑奈の前では委縮して耐え、何もかも受け入れる顔をする。

なのに、紘樹が見ていないところでは、必ず薫に手を上げる。

「いい加減にしろ! 佑奈、すぐ薫に謝れ。今回は俺がこの目で見たんだ。言い逃れするな!」

この目で見た、か。

佑奈は思わず笑いそうになった。

佐伯薫をかばいきる有川紘樹の姿を見て、胸の奥がすとんと冷える。底まで冷え切って、何も残らない。

佑奈はふっと笑った。感情のない、乾いた笑みだった。

「謝れって言ってるだろ」紘樹が眉をひそめる...

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